2016年の国民健康・栄養調査結果が公表されました。5年おきの調査で今回の結果では糖尿病が強く疑われる人が約1000万人、その可能性が否定できない「糖尿病予備軍」が1000万人であることが推計され、糖尿病および糖尿病予備軍が我が国の男性の28.5%、そして女性の21.3%を占めることが明らかになりました。国際糖尿病連合では2017年の世界の糖尿病人口が4億2500万人にも上ることを発表され、世界の全ての国で糖尿病が増加していること、そして特に発展途上国でその増加が著しいことを示しています。世界保健機構は糖尿病が21世紀の病気であり、その対策の必要性を強調しています。
現在日本糖尿病学会は2013年より血糖コントロール目標を簡素化して、目標のHbA1cを「6.0%未満」「7.0%未満」「8.0%未満」の3つに分類しています。まず合併症予防の観点から「7%未満」を目標とすることが奨励され、さらに食事療法や運動療法だけで達成可能な場合や薬物療法中でも低血糖などの副作用がなく達成可能であれば「6%未満」を、逆に低血糖などの副作用や、治療の強化が難しい場合には「8%未満」を目標とするように推奨しています。いづれにしても目標の主眼は合併症予防のための目標値7%未満であり、血糖正常化を目指す場合は6%未満が目標となります。さらに2017年には高齢者糖尿病診療ガイドラインを作成し、高齢者においては健康状態や服薬している薬剤を加味してHbA1cの目標を設定していますので、高齢者の方は主治医と相談しながら自身の目標値を確認してください。
近年糖尿病の薬物治療薬として作用機序の異なる薬剤が開発され、その治療法が大きく変わりつつあります。経口剤では従来のSU剤に、DPP-4阻害剤とSGLT2阻害剤が加わり、注射製剤としてはGLP-1製剤という新しい機序の治療薬が出てきています。またインスリン製剤も作用時間が長く低血糖が少ない製剤が使用されてきています。今後は作用機序の異なる多様な薬の組み合わせで、合併症予防のための目標値の達成度が高まっていくことが期待されます。しかし治療の基本は食事療法と運動療法であることは今後とも変わりません。常に日々の生活を見直して糖尿病の治療に取り組んでいくことが必要です。
新しい目標値を踏まえて、当院外来で糖尿病の薬物療法中の患者さんの達成度を検討してみました。2014年1月にHbA1cを測定した糖尿病の患者さんは875人です(図1)。経口治療薬の患者さんをみますと、合併症予防の目標値6%および7%未満が合計61%の割合を占めていました(図2)。しかしインスリン療法中の患者さんに限ってみますと、6%未満と7%未満が25%で、そして8%以上は42%とコントロールが不十分の方が大半を占めており、インスリン治療の難しさが浮き彫りにされています(図3)。 今後とも医師や薬剤師、栄養士そして保健師を含めてチーム医療を充実させて、患者さんを中心によりきめ細やかな治療を提供していきたいと考えています。
今後とも医師や薬剤師、栄養士そして保健師を含めチーム医療で、よりきめ細やかに患者さんを中心とした治療を提供していきたいと考えています。
文責:与儀 裕(2019.9)
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