肛門疾患のなかで、多いのは痔核、裂肛、及び痔瘻である。その中でも痔核(いぼ痔)が多く、肛門疾患の全体のおよそ6割を占めます。
痔は立って生活する人間特有の病気である。我々の7~8割は痔をもっているともいわれていますが、ほったらかしていても命取りにはならないのと、恥ずかしい部位なので頻度の割には病院を訪れる数は少ないと考えられています。
その保存的治療はほぼ確立されていますが、それ以上の治療になりますといろいろな方法があります。ゴム輪結紮、硬化療法、結紮切除などがありますが、やはり外科的治療の基本は結紮切除です。手術後の出血予防、痛みの軽減を図るため、外科医それぞれがいろいろな工夫しています。
当科ではハーモニック(超音波メス)を多用しています。
痔は良性疾患ですので、根治性を重要視して、とりすぎは慎まなければいけません。痔組織をすべてとる必要はないのです。肛門機能を損ねる手術よりは、再発は少しあっても症状をとってあげれる治療で十分と思われます。術後の愁訴を減らす為に、最近では結紮切除とジオン注硬化療法との併用療法も積極的に行っています。
内痔核の症状は出血と脱出で、その程度で一度から四度に分類します。
その他の症状としては残便感、掻痒、痛みは外痔核を伴う時、
四度でカントンを起こしたときに認められます。
外痔核の症状は痛みと、腫脹である。自壊すると出血も認められます。
痔瘻とは直腸下部と肛門皮膚とが瘻管で交通した状態で、通常歯状線上の肛門陰窩から肛門腺へ細菌が進入し、いろいろな部位に膿のポケットを作り、それが自開したり、切開されたりして、その後、痔瘻になって行くと言われています。その頻度は40%程度で、以前言われたほど高くはないようです。
肛門周囲膿瘍は痔瘻の急性期とは限らず、肛門周囲の毛嚢炎、粉瘤の感染、毛巣洞感染でもウミは形成されます。ですから肛門内の原発口が明らかでない場合は、膿瘍の切開だけに止めることはあります。肛門周囲膿瘍や痔瘻は外科的治療が必要です。
裂肛(切れ痔)とは硬い便などの強い刺激で起こることが多く、肛門管上皮の裂傷を裂肛といいます。女性に多く、乳幼児にも起こります。肛門三大疾患のひとつです。症状は肛門の痛み、及び肛門出血です。
治療は、急性期では便の調整、清潔、坐浴、軟膏などで、ほとんど治ります。便秘と再発を繰り返すと慢性化し、見張りイボができたり、肛門が狭くなってきます。こうなると、何かしらの外科的治療が必要になってきます。
痔の予防にはいきまないことが最も重要です。規則的排便習慣のみで痔は予防可能です。普段から繊維の多い食事をとり、その他適当な運動、入浴(肛門部をお湯につける即ち坐浴)が予防法になります。アルコールや刺激物の取りすぎはいけません。
内痔核の治療の前に確定診断が重要です。内痔核の主な症状は排便時の出血と脱出で、通常痛みはありません。
外痔核、血栓あるいはカントンを伴う時は痛みを伴います。かゆみ、残便感を訴えることもあります。出血だけの場合は内痔核とは限らないので、専門医に相談することをおすすめします。
一度より症状の軽い二度の内痔核が適用になりますが、保存的治療で最も重要なことは、いきみのない排便です。適当な運動、肛門部の坐浴、清潔、及び軟膏など挿肛することで 1 ~2週間で良くなります。それで改善しない場合は専門医の診察を薦めます。基本的には痔核は良性疾患ですから、患者さん本人の希望を優先します。極端な例ですが、脱肛でも本人が希望しなければ手術はしません。ただし内痔核がひどくなると嵌頓を起こし処置が困難になり、治るまで時間がかかるので、初期のうちに専門医に相談することをおすすめします。
治療法 | 手術後疼痛 | 手術後出血 | 入院日数 | 職場復帰 | 再発 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
ゴム輪結紮術 | なし | 少ない | 短い | 早い | 有り | 10,000 | 20,000 | 30,000 |
ジオン注硬化療法 | なし | なし | 短い | 早い | 10%位 | 15,000 | 28,000 | 40,000 |
結紮切除 | 有り | 有り | 約一週間 | 二週間 | 2~3% | 35,000 | 57,000 | 80,000 |
併用療法 | 少し有 | 少し有 | 4~5日 | 1~10日位 | 5% | 30,000 | 50,000 | 75,000 |
痔核(内痔核・外痔核)、裂肛〔切れ痔〕、肛門周囲膿瘍、痔瘻
外痔核: 血栓性外痔核に対しては血栓除去。
外痔核切除
内痔核: 原則的には2度~3度以上の内痔核
術式 1) 結紮切除(LE)
2) 併用療法(結紮切除+ジオン注硬化療法)
3) ゴム輪結紮
4) ジオン注硬化療法
術後合併症
腰椎麻酔後頭痛
肛門痛
肛門出血〔早期、遅発性〕
排便困難。排尿障害
肛門周囲浮腫
術後管理
低位脊椎麻酔(サドルブロック)さめるまでベッド上安静…・3~4時間。
術後処置:アセリオ点滴。ソセゴン15mg im
セレコックス錠200mg又は400mg 術後3時間
ネリ坐軟膏、ヘモナーゼ。
1日2回坐浴。
脊椎麻酔後頭痛対策:輸液。カロナール(鎮痛剤)。水分多量に。ベッド上安静。
排尿障害:術後6時間自尿がなければ導尿します。
排便困難:便の調整(クリーム状が最適)。2日間排便なければ、レシカルボン(座薬)グリセリン浣腸。
術後肛門出血への対応:紙につく程度の出血は術後2週間認める。術後早期に圧迫で止まらない出血は時に止血術が必要。術後2週間頃起こる晩期出血は緊急的に止血を要することが多い。
裂肛切除
LSIS(lateral subcutaneous internal sphincterotomy)
側方皮下内括約筋部分切開。
SSG… 皮膚移植。
切開排膿
痔瘻根治手術 …くり貫き、シートン法。
最終更新日 2020年4月7日
肛門科
仲尾 清
金城 守人
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